皆さん、オープンデータってご存知ですか?

古くには一部の文脈が情報公開という形で語られ、また最近話題の特定秘密保護法案とも関連しており、政府主導で進んでいるので自分たちには関係ない、お国やお役所のお話だと思われるかもしれませんね。

しかし、オープンデータは実は自分たち一人一人に本当に関連するものなんです。

それはなぜでしょう?

政府や行政などが持っているデータは、地域住民、あるいは国民にとっての財産でもあります。しかも、すぐに収益化=ビジネス化しにくかったり、また逆にビジネスになりすぎるデータは一民間企業で囲い込んでしまう可能性もあるため、基本的に政府や行政が作成した方が効率的だと考えられています。

そうした我々の財産であるデータ=情報は、特段の不都合が無い限り実はネットでも公開されてきました。

しかし、みなさん、見たことありますか???

そういう情報が必要な仕事をしている人はともかく、それ以外の人はどこにそんな情報があるかすら分かりません。

でも、もし手軽に政府や行政などのデータが見れるような(検索が簡単に可能な)スマホアプリやホームページがあったら、すごく便利になると思いませんか?

思えないと思ったそこのあなた、たとえばウェザーニュースのスマホアプリやホームページを見たこと、ないですか?
どこかの普通の天気予報より、全然便利じゃないですか??

そしてたとえば、ブラックジャックによろしくのパロディ版は見たことありませんか?
あれが訴えられずにどんどん世の中に広がっているって素敵じゃないですか??

データをうまくみんなで活用することを促進する仕組みが整っていれば、こうした事例が洪水のように出て来て、自分たちの暮らしがより便利に、豊かになる – それが、オープンデータが自分たち一人一人に本当に関連するものだ、と考えています。

前置きが長くなりました。
NPO法人横浜コミュニティデザイン・ラボ内に事務局を置く、去年12月に設立された横浜オープンデータソリューション発展委員会(YODS)は、この一年、大学・企業・市民・行政と連携しつつ、様々な取組みを行って参りました。

横浜市と鯖江市が総務省自治体情報実証に協力していたこともあり、横浜での取組みは常に注目され、紆余曲折はあったものの曲がりなりにも様々なハッカソン、アイディアソン、フィールドテストを行い、着々と成果を挙げて来たと自負しております。

そう言った中、ちょうど活動から1年となる12月に、去年も開催されたオープンデータ流通推進コンソーシアム主催のオープンデータシンポジウムが、12月9日(月)に東京大学 伊藤謝恩ホールで開催されました。

YODSに携わっている方々も多く見受けられる中、13時半から開会の挨拶、そしてオープンデータ流通推進コンソーシアム会長であり、三菱総合研究所理事長である小宮山 宏氏から「オープンデータとビジネス」と題してミニ講演を頂きました。小宮山氏は「これからのオープンデータは『技術』が大事だ」と述べられ、さらに深化を求める趣旨の発言を頂きました。

その後総務省・内閣官房・経済産業省の担当者が登壇し、この1年の取組みを発表されました。

そしてイギリスでの先行事例をODIメンバーシップ・プログラム・マネジャーであるRichard Stirling氏から基調講演を頂きました。
ビジネスの可能性等、色々言及されておりましたが、一番印象的だったのは「Knowledge for everyone」というシンプルなお言葉でした。

そしてマンガ界の風雲児、佐藤 秀峰氏からの基調講演を頂きました。本日の目玉ですね(笑)
ブラックジャックによろしくを二次利用フリー化し、大手出版社や他の著作権者などから良い顔をされていないであろうことは明白ですが、氏の会社はむしろ儲かっているそうです。芸術におけるマネタイズ手法を氏は開発したと言えるのではないでしょうか。
また30分の講演に120枚のスライドを用意してくるマイペースさもあり、会場は暖かい笑いに包まれました。

その後休憩を挟んだ後、オープンデータ流通推進コンソーシアム各委員会の活動報告に移りました。

技術委員会(主査:越塚 登氏)ではデータ作成に関する技術ガイド・CSV形式データ規格・情報流通連携基盤システム外部仕様書を作成し、実務者会議に置けるルール整備でのたたき台を提供されたり、オープンデータ推進への宣言を起草する提案等を行い、基盤整備を進める上で核となりうる方向性を呈示などを推進されています。

データガバナンス委員会(主査:井上 由里子氏)では、データ取扱に関する基本的な考え方の整理や、ケーススタディ、利用規約案、契約書案、マニュアルなどを作成し、政府・行政職員の実務を円滑に推進するためのロジック整理などを推進されています。

利活用・普及委員会(主査:中村 伊知哉氏)では、気象データアイディアソン・ハッカソン開催、オープンデータシンポジウム2回開催(2012・2013)、勝手表彰、ウェブ等での情報発信・共有、また自治体分科会などを推進し、今後さらに海外や、アプリコンテストなども開催される予定です。

最後に鼎談をRichard Stirling氏と、国際大学GLOCOMから庄司 昌彦氏と渡辺 智暁氏の3者で行いました。庄司氏はYODSの理事でもあります。

会場からの質問ベースでしたが、イギリスの事例を基に、日本で実際にオープンデータを推進するとどのような問題があり、どのような解決策などがあるかという部分を探る50分間でした。

イギリスの場合、財産権を侵害しかねないデータ(例:犯罪件数をマッピングした地図など)の公開で論争が起きたり、データの不正利用が懸念されました。しかし、以前から犯罪が多い地区はそれとなく分かっていたり、ジャーナリズムが根拠の乏しい論説をはったりするのは日常茶飯事で、実際に何かが起こったことはあまりないとのことでした。

より重要なのは、人々がきちんとしたデータにすぐアクセス出来るようになったため、議論の質が高まったことであるとRichard氏は述べられていました。自分に取って有利なデータ抽出をして論戦する人も確かにいるものの、それでもデータにみんながアクセス出来た方が、出来ない時よりもはるかに質の高い議論をされているとのことでした。

庄司氏からは、日本の現状におけるオープンデータ推進の短期的なメリットがあまりなく、縦割りごとにデータの形式が違うため、キーボード手打ちでデータ整理する業務も実際にはじまっており、なかなか納得してもらえないときもあるというニュアンスの発言がありました。

また、オープンデータの文脈で作られたイギリスの時刻表アプリなどは、公共機関からの差し止め訴訟が提起されて提供中止の憂き目にあったケースもあるとRichard氏は述べられていました。これは、ある種オープンデータを推進すると破壊的イノベーションが生まれるケースがあり、社会的秩序を乱しかねないと判断されてしまう危険性も示唆されています。

ただ、それでも社会全体として、誰がいくら儲かるか、その先にどういう経済、カルチャー、業界の新しい道を作っていけるかという点で押し進めていった方が良く、そしてあくまで民主主義の更なる推進というのが経済よりも先にあるというお話があり、また庄司氏・渡辺氏からは地域活動もさらに推進していきたい旨の発言も飛び出し、まだ日本は情報ポータルも正式運用されていないものの、だいぶ政府の動きも円滑になって来たので、今後世界の最先端オープンデータ社会に日本をしていくためにポジティブに取組んでいきたい旨の発言があり、閉会となりました。

去年がオープンデータ元年、ちょうど1年が経ち、今後も加速度的に推進されていくであろうオープンデータ。
オープンデータに関連するキーワードをタグ化してみましたので、興味ある単語を良かったら調べてみてください!

また横浜オープンデータソリューション発展委員会では、12月21日(土)14時から、大さん橋国際客船ターミナルで
「大さん橋ARミニまち歩き×ワークショップ」が開催されます。
オープンデータに少しでも興味ある方、年末の忙しいときではありますが、皆様ご都合合わせの上奮ってご参加ください!
https://www.facebook.com/events/553080191446431/

写真・文/YCDL CD T・N