1冊の本を基点に、著者の生の声を聞き、深く対話する。未読の本には好奇心を刺激され、読み終えた本には、これまでとは違う視点と発見が生まれる——。そんな知的な喜びと感動が詰まった場が「ラボ図書環オーサートーク」です。2012年から続くこのトークシリーズは、これまでに58回の開催実績を誇ります。59回目となる今回は、2025年10月に『まちは言葉でできている』(柏書房)を上梓された西本千尋さんをお迎えします。

◆ 寿町で、この本を読む意味
今回の会場は、横浜・寿町にある「ことぶき協働スペース」です。
寿地区は、大阪の「あいりん地区」、東京の「山谷地区」とともに、日本三大寄せ場の一つとして数えられています。関内駅から徒歩10分、石川町駅から徒歩5分ほどの位置にあり、面積0.1km²にも満たない狭い地域に約120軒の簡易宿泊所が密集して建ち並んでいます。戦後、日雇い労働者の街として形成されたこの地区は、現在は住民の約6割が高齢者という「福祉の街」に変化しています。外国ルーツの方々も多く暮らし、様々な事情を抱えた人々が生活を営んでいます。
西本さんが本書で問い続けた「脆弱な人が生きられるまちとは何か」「制度からこぼれ落ちる人々の存在をまちづくりはどう扱ってきたか」——その問いは、寿町という場所でこそ、最もリアルな重みを持ちます。経済活性化を優先する「攻め」のまちづくりからこぼれ落ちてきた人々と、長年向き合い続けてきた街で、この本を開く。それが今回の開催の意図です。
◆ 本書について
本書は、まちの「制度」と「現れ」を見つめ続けてきた実務家による、切実なまちづくりの記録です。
著者・西本さんのキャリアの原点は、横浜・妙蓮寺の商店街。段ボールが道路にはみ出し、人々が制度の隙間を縫うように暮らすカオスな「現れ」に惹かれ、手刷りのフリーペーパー『いどうしんぶん』を作り始めたことが、この本の出発点となりました。
その後、エリアマネジメントの現場でオープンカフェ設置に伴うホームレス排除を経験したこと、そして自身が子育てを通じて「ケアする主体」となったこと——この二つの経験が、経済活性化を第一とする「攻め」のまちづくりから、福祉や生活を支える「守り」の実践へと、西本さんの眼差しを変えていきます。
「すべて景色の前には『言葉』がある。わたしたちは『言葉』でまちをつくってきた」——専門家や行政の言葉ではなく、生活にねざした言葉でまちを語り直したい。そんな思いから書かれた、デビュー作にして集大成のような一冊です。
当日は本書をひもときながら、西本さんの歩みとまちを見る眼差しの変化についてじっくりお話を伺います。また、かつて横浜の都市デザインの祖・田村明さんから「あなたは、ひらがなの『まちづくり』の時代の人なのですね」と言葉をかけられたエピソードも含め、開発・効率の「街づくり」やイノベーションの「マチヅクリ」からこぼれ落ちるものをすくい取る、ひらがなの「まちづくり」とは何かを会場の皆さんと一緒に考えます。
〈実施概要〉
日時: 2026年7月11日(土曜日) 13:30〜16:00(13:00開場)
場所: ことぶき協働スペース
住所:横浜市中区寿町4丁目14 健康福祉交流センター 2階
URL:https://kotobuki.space/
主催: NPO法人横浜コミュニティデザイン・ラボ
後援: LOCAL GOOD YOKOHAMA、ヨコハマ経済新聞
協力: 橋詰 健 様
参加費: 1,500円(現地参加のみ) / オンライン(見逃し配信・後日) 1,000円
<お申込み> https://labbook0711.peatix.com/view
<ゲストプロフィール>
西本千尋(にしもと・ちひろ)さん
1983年埼玉県川越市生まれ。埼玉大学経済学部社会環境設計学科、京都大学公共政策大学院卒業(公共政策修士)。NPO法人KOMPOSITION(居住支援法人)理事/JAM主宰。2003年から商店街、景観、観光、歴史的建築物、町並み保存、エリアマネジメント、居住支援等、各種まちづくりに携わってこられました。跡見学園女子大学兼任講師。埼玉県景観アドバイザー、歴史的建築物活用ネットワーク(HARNET)事務局なども務めておられます。
著書関連記事:https://note.com/kashiwashobho/n/n6806f8bc0a27
◆ 進行者プロフィール
宮島真希子(みやじま・まきこ)
元神奈川新聞記者。NPO法人横浜コミュニティデザイン・ラボ理事。ひとりひとりが参加する民主主義の現場としての地域・ローカルという視点で、地域プロジェクトづくりに関わってきました。本イベントのコーディネーターを務めます。「まち、そしてまちづくりは誰のものか」という問いを、地域報道の現場と市民活動の双方から、今も問い続けています。
<進行(予定)>
- はじめに:ラボ図書環/ことぶき協働スペースについて
- 本日のゲスト 西本千尋さん紹介
- ゲストインプットトーク
- Q&A 〜 交流タイム 進行:横浜コミュニティデザイン・ラボ理事 宮島真希子
<ラボ図書環オーサートークについて>
NPO法人「横浜コミュニティデザイン・ラボ」が運営するシェアスペース「さくらWORKS<関内>」内のみんなでつくる本棚「ラボ図書環」が企画する、本の著者や編集者などをお招きする公開トークシリーズです。
