東京大学伊藤謝恩ホール(東京都文京区本郷7-3-1)で12月10日(月)、オープンデータシンポジウム オープンデータは社会を変えるか 私たちが今取り組むべきことが開催されました。

 そもそもオープンデータは、欧米諸国におけるオープンガバメント推進の流れを受け、7月に政府による「電子行政オープンデータ戦略」が策定されたことで注目が集まっている分野です。公共データのオープンデータ化を推進しようと言う大きな流れと、それと民間・個人ベースのデータマッシュアップなどの動きをうまくミックスして、イノベーションを進めていこうという部分も含まれる少し大きな概念ですが、その可能性は大きいと思います。

 このシンポジウムは、そうした中、本年7月27日に設立された「オープンデータ流通推進コンソーシアム」と総務省が主催となり、より多くの人々にオープンデータについて知っていただき、理解を深めていただくことを目的としていました。

 横浜コミュニティデザイン・ラボに事務局を置く、12月19日に正式発足予定の「横浜オープンデータソリューション発展委員会」の理事も複数このコンソーシアムに参加しており、またラボ自らもオープンデータの取組みを積極的に押し進めていこうとしています。そのため、今回は勉強とご挨拶と取材を兼ねて、代表理事の杉浦と理事の宮島、また本稿を執筆している中村が参加しました。

 政府の担当者が登壇した後、オープンデータ流通推進コンソーシアム会長である小宮山 宏氏、同顧問の村井 純氏、坂村 健氏のご講演があり、そして同委員会活動報告、事例紹介、パネルディスカッションと「横浜オープンデータソリューション発展委員会」の理事も登壇しました。

 三菱総合研究所理事長でもある小宮山氏は「プラチナ社会とオープンデータ」と題して、「現在情報革命という人類の大転換期の真っただ中に我々はおり、その中で我々は何を目指すか、ということが問われている。それはプラチナ社会であると考える。つまり、エコロジーで資源の心配がなく、老若男女が参加し、心もモノも豊かで、雇用もある社会である。21世紀前半にモノが行き渡った時、クオリティ、つまり質がさらに問われるようになる。そうした中、いかにイノベーションを起こしてjobを創るか。その仕組みを作れた所が強くなっていくであろう。一つには医療×ICTが可能性がある。そうしたイノベーションを起こす前提として、オープンデータが必須である。」といったお話をされました。

 慶応義塾大学環境情報学部長でもある村井氏は「オープンデータ インターネット基盤の責任と役割」と題して、「インターネットアクセス権が人権化しつつある。インターネットも大きくくくればデジタルデータ。数値だから簡単に国境を越え、ここまで大きくなってきた。そうした中、オープンデータというのはクラウドソーシングとも関連し、非常に重要である。国が持つデータも重要だが、いかにしてデータを作り出し、それを専門家が分析したりなどして活用するか。そうしたところでウェザーニュースの豪雨予測は先進的である。また、3.11を経験した我々は国が公開したデータが正確か、正直か、隠していないか、と言う部分を注視するようになった。この部分にアカデミズムと知恵が必要であり、エビデンス ベースド ソサイエティが重要である。」といったお話をされました。

 東京大学情報学環教授でもある坂村氏は「オープンデータとユビキタス」と題して、「オープンデータは皆でやる、皆で出来る。みんなで社会を作ることが出来る、参加できる仕組みにしていくことが重要である。そうした中、単純にデータを公開するだけではあまり広がりがなく、例えば画像でグラフや表を公開されても、データとしては読み取れない。また、Flashの場合、グラフィカルでインタラクティブではあるものの、画像のように保存が出来ず、またデータを取り出すのも難しい。そしてCSVで公開されても、ある特定のデータを探すのにいちいち手間がかかる。そうした中、重要なのはAPIである。これはアプリケーション開発の際、プラットフォームで使えるリソース(データ、機能等)へのアクセス方法への決まりのことを指すが、これがあれば簡単に欲しいデータにアクセスできる。APIがなければ多くの人に使ってもらえるようなサービスが育つ土壌がないのと同様である。そしてディベロッパーズサイト。ここがきちんと整備されていないために使ってもらえないサービスは日本には結構ある。エンジニアにいかに気持ちよく使ってもらえる仕組みを作るかが重要である。そして、こういった動きを進める上で、オープンデータ関連の話は英米法的に、ネガティブリストでの法運用をして、『意図と状況』に注目し、公共の哲学の基での正義で判断しない限り難しい。また村井氏も話されていたが、フィンランドの事例のように、ネット接続権を人権とする国民のコンセンサスが得て、イノベーションインフラとして国家の成長に繋がるように進めたい。」といったお話をされました。

 委員会活動報告では、技術委員会は東大の越塚教授、データガバナンス委員会は一橋の井上教授、利活用・普及委員会は慶應の中村教授からお話があり、現在の課題整理などの進捗状況が報告されました。標準仕様策定や、利用規約の標準化や、プロモーションの課題など話題は多岐に渡りました。

 活用事例紹介では、気象データハッカソンで得られたことや、オープンデータに関する企業ニーズ調査、GLOCOMや横浜オープンデータソリューション発展委員会におけるコミュニティ形成への取組み、海外事例を、事務局村上氏、経団連の神崎氏や、横浜オープンデータソリューション発展委員会理事の庄司氏・川島氏から報告されました。実際に成功している事例が数多くあることを改めて実感しました。

 そしてパネルディスカッションでは、越塚氏、井上氏、中村氏、川島氏、庄司氏、神崎氏、梅村氏(総務省)、村上氏が登壇し、テーマである「オープンデータは社会を変えるか 私たちが今取組むべきこと」を討論しました。この時点でかなり時間が押していたので、予定よりは若干短かったものの、それぞれの立場からどんどん推し進めていこう、という意思を強く感じられた時間でした。

 終了後の交流会では、代表の杉浦もライトニングトークで横浜オープンデータソリューション発展委員会を強くアピール。オープンデータに取組む各関係者と親交を深める良い機会となったようです。

 新年からさらに横浜をはじめ、各地で盛り上がるであろうオープンデータ。今後も要チェックですね!

【関連リンク】
▽オープンデータ流通推進コンソーシアム
http://www.opendata.gr.jp/

▽オープンデータシンポジウム オープンデータは社会を変えるか 私たちが今取り組むべきこと
http://www.opendata.gr.jp/1st_symposium/

▽横浜オープンデータソリューション発展委員会 設立準備委員会(Facebookページ)
http://www.facebook.com/yokohamaopendata

ラボ インターン? 中村