政府や自治体など公的機関による「オープンデータやビッグデータ」に関する取り組みが活気を帯びています。種々のデータが政府の透明性の向上、政治への参加の促進、マルチセクターによる協働の推進などの原動力となることが期待されています。まちづくりの分野でもさまざまなデータを組合せ処理することにより、これまで難しかった課題への解決策が見いだされるようになってきました。
本セミナーでは、まちづくり、なかでも「交通マネジメント」の分野で実績のあるゲストをスペイン・バルセロナからお招きし、オープンデータやビッグデータが、これからのモビリティマネジメントやタウンマネジメントにどのような変革をもたらすのかを考えていきます。
カタルーニャ工科大学で交通シミュレーションや交通マネジメント研究で世界的に著名なジャウマ・バルセロ氏(Dr. Jaume Barceló)をお招きし、各種センサーデータの取得と交通シミュレーションによる最新の交通マネジメント手法などをご紹介いただきます。
また、後半のパネルディスカッションでは、横浜国立大学理事・副学長の中村文彦氏による進行のもと、産官学それぞれの立場の方々に登壇いただき、オープンデータ時代のまちづくりへのICTの利活用のあり方を描き出します。ホワイエではパネル展示を予定しています。
<概要>
日時:2015年8月8日(土)13:30〜16:30(13:15開場) ※終了後に懇親会
会場:情文ホール
(情報文化センター6F、横浜市中区日本大通34)
http://www.idec.or.jp/shisetsu/jouhou/access.php
受講料:一般:3,000円、学生:1,000円
定員:100人
申込み方法: http://ptix.co/1QGf5DA より
主催:横浜市経済局
共催:NPO法人横浜コミュニティデザイン・ラボ
協力:横浜国立大学*予定、Code for YOKOHAMA、 laboratory urban DECODE、一般社団法人リンクデータ
後援:バルセロナ市
企画・コーディネート:laboratory urban DECODE
・吉村有司(元バルセロナ市役所、MIT センサブル・シティー・ラボラトリー)
・小林巌生(Code for YOKOHAMA)
<プログラム(敬称略)>
趣旨説明・開会あいさつ 13:30〜13:45
開催趣旨説明
・杉浦裕樹(横浜コミュニティデザイン・ラボ)
「オープンデータ活用ビジネス化支援事業」について
・高橋功(横浜市経済局成長産業振興課 課長)
開会あいさつ
・長谷川 孝(横浜市政策局 政策調整担当理事)
基調講演 13:45〜14:35
1.「データサイエンス、都市交通、そして交通マネジメント」
・ジャウマ・バルセロ(カタルーニャ工科大学 名誉教授)
2.「オープンデータ:市民主体の街づくりのインフラスチラクチャー」
・川島宏一(筑波大学システム情報系社会工学域 教授)
パネルディスカッション14:45〜16:00
「オープンデータ時代のまちづくり(仮)」
登壇者
・ジャウマ・バルセロ(カタルーニャ工科大学名誉 教授)
・川島宏一(筑波大学システム情報系社会工学域 教授)
・黒水公博(横浜市温暖化対策統括本部 副本部長)
・東浦亮典(東京急行電鉄株式会社 都市創造本部 開発事業部 事業計画部統括部長)
モデレーター
・中村文彦(横浜国立大学理事・副学長)
クロージング 16:00〜16:30
・中村文彦(横浜国立大学理事・副学長)
▼講演1:ジャウマ・バルセロ氏(カタルーニャ工科大学名誉教授)
「データサイエンス、都市交通、そして交通マネジメント」
交通データの収集にはコストがかかる各種センサーの設置や、収集したデータの欠陥など、常に困難が付きまとう。近年、トラッフィクカウンターや感知レーダーといった「古い技術」が、視覚技術(カメラ)や近距離無線(Bluetooth/Wi-Fi)といった「新しい技術」に取って変わられてきた。また、GPSやスマートフォンなどの機器を搭載した車両自体をセンサーと見なすことにより、車車間通信(V2V)や路車間通信(V2I)といった技術も確立されつつある。利用可能になってきたビックデータは、そこから有益な情報を抽出するデータフィルタリング、データマイニング、データフージョンといった分析手法の開発を促進している。
今回の講演会では、交通に関するデータ収集に用いられる最新技術を概観し、収集されたデータの活用手法や分析テクニックを論じる。更に、交通マネジメント政策を改善する為の政策決定ツールという枠組みにおいて交通モデルを論じる。また、交通ネットワークをよりよく理解する為の新しい交通モデルが、より効率的な交通マネジメントへの基礎を提供するという視点から、近年世界中で話題となっているNetwork Fundamental Diagramを紹介する。
▼講演2:川島 宏一氏(筑波大学システム情報系社会工学域教授)
「オープンデータ:市民主体の街づくりのインフラスチラクチャー」
オープンデータは、法的、社会的、経済的に大きなインパクトをもたらしつつある。法的には、公的機関が保有しているデータの性質を、Closed by DefaultからOpen by Defaultに変化させた。社会的には、これまで行政機関が受け止めてきた社会課題を、企業や市民社会が、直接、共有し、課題解決にアクションを取ることを可能とした。経済的には、医療、交通、教育、災害、エネルギー、人口移動などに関する質の高いデータの分析は、ビジネスや暮らしの効率性、安全性、利便性、快適性などに抜本的な付加価値をもたらす。
世界のオープンデータ分野では、経済的な付加価値を十分に実現するためには、「誰が、どのようなデータを、どのような品質で、プライバシーやコストにも配慮しながら、社会インフラストラクチャーとして整備・維持すべきか」についての議論が盛んである。いま、英国Open Data Instituteや米国ニューヨーク大学のGovernance Laboratoryが展開しているこの分野の議論を紹介するとともに、この議論が日本社会にもたらす含意について紹介する。
【講師】
▼ジャウマ・バルセロ氏(カタルーニャ工科大学 名誉教授)
1974年、バルセロナ自治大学物理学専攻博士課程修了、Ph.D(物理)取得。交通問題へのシミュレーション技術と最適化の適応を専門とし、交通工学とモデリング分野において30年以上の研究実績を有する。1985年にはミクロ交通流シミュレータであるAimsun(エイムサン)を開発する研究グループを立ち上げ、TSSを共同設立。2008年まで同社のサイエンティフィック・ディレクターを務める。現在は、カタルーニャ工科大学InLab FIBにてICT&交通計画部門の責任者を兼任している。現在までに、20以上の欧州プロジェクトにPIとして参加、100編を超える交通に関する書籍、論文、カンファレンスペーパーなどを出版。Journal of Operations researchやTransportation Research part Cなどのアソシエイトエディターなどを務める。カタルーニャの科学技術の発展に貢献した功績から、カタルーニャ州政府からNarcis Monturiol Medal(1997年)を、2001年にはバルセロナ市からHonorific Mentionを受賞している。
▼川島 宏一氏(筑波大学システム情報系社会工学域 教授)
1959年茨城県土浦市生まれ。国土交通省、インドネシア住宅省、北九州市、世界銀行を経て2006年から2011年まで佐賀県CIOを務め、現在は特別顧問。社会工学博士。(株)公共イノベーションを起業するとともに、IT戦略本部・新戦略推進専門調査会電子行政分科会構成員、地域情報化アドバイザーなど複数の立場から、IT×市民力による社会課題の解決に取り組んでいる。内閣官房IT総合戦略本部電子行政オープンデータ実務者会議構成員(2012年~)、大阪市特別参与(2013年9月〜)、(社)オープンデータ・ビッグデータ活用・地方創生推進機構利活用普及委員会委員(2014年~)。
【パネルディスカッション登壇者】
・ジャウマ・バルセロ氏(カタルーニャ工科大学 名誉教授)
・川島 宏一氏(筑波大学システム情報系社会工学域 教授)
・黒水 公博氏(横浜市温暖化対策統括本部 副本部長)
1989年横浜市役所入庁後、1994年より3年間、フィリピン国運輸通信省にて、マニラ首都圏都市交通計画に携わる。以後、みなとみらい線、横浜環状道路など都市整備や、道路・交通計画関連業務を担当。2003年から2006年まで、温暖化対策課長として地球温暖化対策に従事。2011年より2013年まで、共創推進室国際技術協力担当部長を務め、横浜市内企業の海外インフラ事業展開を支援。2014年より2015年まで、都市整備局都市交通部長として、総合交通を担当。2015年より温暖化対策統括本部副本部長として横浜スマートシティプロジェクト(YSCP)等、環境・エネルギーに係わる取組を担う。
・東浦 亮典氏(東京急行電鉄株式会社 都市創造本部 開発事業部 事業計画部統括部長)
1985年 東急電鉄入社。自由が丘駅員、大井町線車掌研修を経て、開発部門に配属。一時東急総合研究所出向。復職後、商業施設開発やコンセプト、賃貸住宅ブランドの立ち上げなど、主に企画開発畑を歩む。現在は東急沿線全体のマーケティング、ブランディング、プロモーションを担当。2012年からは横浜市と包括協定を締結して「次世代郊外まちづくり」という郊外住宅地再生事業にも取り組む。
・中村 文彦氏(横浜国立大学理事・副学長)
横浜国立大学 理事・副学長・教授 工学博士(東京大学,1991)1989.3 東京大学大学院工学系研究科博士課程 中退、1989年~95年 東京大学工学部助手、1992.年~94年 アジア工科大学院助教授(海外派遣)、1995年 横浜国立大学工学部助教授、2004年 横浜国立大学大学院環境情報研究院教授、2006年 横浜国立大学大学院工学研究院教授、2013年4月~ 大学院都市イノベーション研究院長、2015年4月~現職。主な著書に「60プロジェクトによむ 日本の都市づくり」(共著、朝倉書店2011)「バスでまちづくり」(学芸出版社2006)「都市交通計画(第2版)」(共著、技報堂出版2003)。
【コーディネーター・進行】
・吉村有司(元バルセロナ都市生態学庁(バルセロナ市役所)、MIT センサブル・シティー・ラボラトリー)
愛知県生まれ建築家。バルセロナ現代文化センター、UNESCO Chair(UPC)、バルセロナ都市生態学庁、カタルーニャ先進交通センター勤務などを経て、現在、laboratory urban DECODE共同代表、マサチューセッツ工科大学SENSEable City Lab Research Affiliate、地中海ブログ(http://blog.archiphoto.info/)主催。
バルセロナオリンピックなど大規模イベントを活用した都市活性化手法や都市戦略を研究する一方で、公的機関という立場からバルセロナの都市計画・都市戦略の立ち上げに携わる。主なプロジェクトに、中心市街地活性化のモデルとして知られるグラシア地区歩行者計画(BMW賞受賞)、バルセロナ市内を走る全てのバス路線を変更したバルセロナ市バス路線変更計画、コンパクトシティの推奨モデルとして参照されるビトリア市緑の指輪計画(EUグリーン賞受賞)など多数。また、ブルッセルの欧州委員会と共にスマートシティとモビリティを中心とした各種EUプロジェクト(FP7, Horizon 2020)の立ち上げにも参画。ダブリン市役所、ヘルシンキ市役所、バルセロナ市役所など10以上の公的機関・私企業を巻き込んだICINGプロジェクト(2005-2008)ではモビリティ部門の責任者としてプロジェクトをリード。このプロジェクトは欧州におけるスマートシティのはしりとして高く評価され、世界スマートシティ・エキスポ国際会議のバルセロナ誘致に大きく貢献した。
近年は、クレジットカードの行動履歴を用いた歩行者回遊分析手法の開発や、Bluetoothセンサーを用いたルーヴル美術館来館者調査・研究がファイナンシャル・タイムズに紹介されるなど、ビックデータを用いた歩行者分析の分野で世界的な注目を浴びる。
参照:
バルセロナオリンピックは何故成功したのか?:http://blog.archiphoto.info/?eid=1170745
ルーヴル美術館来館者調査・研究:http://blog.archiphoto.info/?eid=1170770
グラシア地区歩行者計画:http://blog.archiphoto.info/?eid=1170625
バルセロナ市バス路線変更計画:http://blog.archiphoto.info/?eid=1170754
※当日、ホワイエでパネル展示を行います。出展に関心がある方はご連絡下さい。
▽「Eco-Counter」(株式会社 岩崎)
フランス・エコカウンター社が設計・開発・製作をしている市街地や自然環境において通行する自転車や歩行者を計測する装置。世界35カ国で5000台以上の販売実績がある。 http://www.eco-compteur.com/en/
▽「YOKOHAMA YOUTH Ups! 2015」(横浜オープンデータソリューション発展委員会/横浜市政策局)
▽「Code for YOKOHAMAの活動紹介」(Code for YOKOHAMA)
▽「オープンデータ活用ビジネス化支援事業」 (横浜市経済局成長産業振興課)
▽「ナレッジコネクターについて」(一般社団法人リンクデータ)
▽「ファブラボとスマートシティ」(横浜コミュニティデザイン・ラボ/ファブラボ関内)
ほか
【懇親会】
・日時:8月8日(土)17時15分〜(受付開始:16時45分)
・会場:さくらWORKS<関内> (横浜市中区相生町3-61泰生ビル2F)
・参加費:1,000円(懇親会のみ参加の方 2,000円) 料理・ドリンク付
※正式な参加申込はこちらでお願いします。
http://ptix.co/1QGf5DA