こんにちは。スタッフの鈴木です。
11月27日に東京大学本郷キャンパス鉄門記念講堂で開催された「2018年第4回リビングラボ研究交流会」に参加してきました。
本研究会は、自動車技術会デザイン部門委員会とのコラボレーション企画となっており、講演内容も高齢化社会をモビリティの視点から考える内容となりました。
第1部では「長寿社会の課題とリビングラボの可能性」と題し、高齢社会共創センター長で東京大学高齢社会総合研究機構特任教授の秋山弘子教授よりお話がありました。アジアでも急速に高齢化が進んでいる事実があり、どのように”いきいきと年を取るか”を考えることが、喫緊の課題となっています。秋山教授は「石像が自ら石を掘る」という表現を、画像と一緒に説明をされましたが、自分で自分の人生を設計し、自分で「生きる」ことがますます求められている社会になっているとも言えます。そのような流れの中で、多様な主体が対話を通じてお互いを理解し、新しいものを創りだすリビングラボは、「最後までいきいきと生きるための当事者のためのツール」という側面とともに、「主体的に高齢化社会と向き合うための企業やステークホルダーのツール」として期待されることが、お話から改めて感じたことでした。
第2部では、議題を「超高齢未来の移動とライフスタイル」とし、まず東京大学大学院新領域創成科学研究科人間環境学専攻教授の鎌田実教授から「自動運転の現状と展望」をテーマにお話がありました。
自動運転は、高齢化する社会において高齢者が不自由なく過ごすための一つの「希望」とも言えます。しかし、日常生活で活用されるにはまだ長い道のりがあるといいます。科学技術が発展する世の中ですが、それを持っても自動運転車が街を走行できるまでのレベルに追い付かず、リスクが多いということでした。
パネルディスカッションでは、秋山教授がファシリテーションを務め、講演した鎌田教授に加え、ヤマハ発動機株式会社の田中昭彦さん、ダイハツ工業株式会社の谷隅英樹さんの4人が登壇し、超高齢未来のライフスタイルについて話し合われました。
高齢化する社会を前に、いかに高齢者が住みよく暮らせるか—。身体が思うように動かなくなる高齢者が多い中、高齢者の「移動」手段について、今後さまざまな試行錯誤が繰り返されることとなりそうです。一つには、既に議題にもなった自動運転、また、ライドシェアも考えられます。
そういった取り組みを街に取り入れるためには、既存の社会、街のシステムを再構築していくことになります。そうすると、まちづくりに関わるステークホルダー全体で、力を合わせることも必要になってきます。高齢者の「移動」一つとっても、街全体の話に広がります。
また、例えば荷物配達にしても、玄関に置いていくだけではせっかく持ってきてくれても意味がなく、冷蔵庫まで運ぶまでが本当は望ましいという意見も。しかし、そこには防犯も視野に入れて考えなくてはいけません。
「みんなが高齢になるまで楽しんで生きていける社会」について、具体策は「新しい技術」と「まちづくり」をかけあわせる中で創出していくということが、お話の中から見えてきました。このように一行で書くことができる言葉でも、そこにはいくつの機関や団体、企業が関わることになるのでしょうか。また、そこには何百、何千もの人が、新しい価値を生み出すために頭を悩ませます。
イギリスには「孤立担当省」ができました。地域の中で「孤立」を抱えたまま寂しい気持ちで過ごす高齢者を、何とか外へ…。そのための手段として、移動—モビリティ—を考え、さらにはまちづくりを考える。そこに、多様なセクターが参加し、アイデアを創出するリビングラボの可能性がある。そのように感じた、研究会でした。