さくらWORKS<関内>で10月10日、発達障害の10代を支援する通信制高校のサポート拠点を開設する「横浜ソーシャルインクリュージョン・ハブ事業」の事業説明会を開催しました。ソーシャルインクリュージョン活動に携わる人達の集う場を育てていきま…

Posted by 横浜コミュニティデザイン・ラボ on 2015年10月10日

2015年10月10日((土)、横浜コミュニティデザイン・ラボは新規事業「横浜ソーシャルインクリュージョンハブ(SIH)支援事業」の事業説明会を行いました。

この事業は、「学びづらさ」を抱える10代の子供たちの進路となる通信制高校サポート拠点「横浜ラーニングデザイン高等学院」と、さまざまな自助グループ・学習支援団体の活動拠点を、横浜コミュニティデザイン・ラボが2016年4月から開設・運営するプロジェクトです。

SIHを設けるのは、横浜コミュニティデザイン・ラボが運営するシェアオフィス「さくらWORKS<関内>」と同じ泰生ビルの3F。1室をリノベーションし、約10人が学べる場を整備します。
この拠点を、午前から夕方まで「横浜ラーニングデザイン高等学院」として使用し、夜は社会的に排除されがちな人達を支援する団体・当事者グループと連携し、活動の場として使ってもらう計画です。

今回の説明会には、発達障害の子供を育てている保護者や支援関係者ら約30人が出席しました。

冒頭、NPO法人横浜コミュニティデザイン・ラボ代表理事の杉浦裕樹が法人の沿革、現在取り組んでいる事業について説明を行いました。

情報技術・インターネットを活用し地域の情報をさまざまにつなぎ、新たな人の出会いを創出するメディアを運営するNPO法人として、ヨコハマ経済新聞・LOCAL GOOD YOKOHAMAなどの事業を紹介しました。

次に、横浜コミュニティデザイン・ラボ理事兼横浜ラーニングデザイン高等学院学院長宮島真希子が新事業についてくわしく説明しました。

宮島はまず「ソーシャルインクリュージョン(社会的包摂) 」※1という考え方をます、紹介しました。「健康で文化的な最低限度の生活」を送るために、ひとにはさまざまな教育機会・福祉的サービスへのアクセスが必要ですが、孤立してしまうとセーフティネット自体につながることができず、生活・いのちの危機に陥ります。

横浜コミュニティデザイン・ラボではこれまで、メディアによる情報発信を通じて、さまざまな団体の活動を広く知らせてきました。今回の事業では、特に「ソーシャルインクリュージョン」にかかわる活動を展開する団体などと連携し、そうした団体の発信を支援する方針です。

また、「横浜ラーニングデザイン高等学院」の開設理由として宮島は「発達障害を抱えている中学生が増加している一方で、高校での特別支援教育体制が整備されておらず、進路選択の幅が狭い」という状況を、データで紹介しながら説明しました。

特に、高機能自閉症やアスペルガー症など知的な遅れはないながらも自閉症スペクトラムである子供たちが苦しんでいる状況について「本来、公立も力を入れるべきであるが、待っていられない。小さくても民間で、地域でできることから積み重ね、政策提言にもつなげていきたい」と、開設を決めた思いを語りました。

自身も自閉症スペクトラムを抱えた子供を育てている宮島は最後に「教育を施す立場ではなく、こども・保護者と対話をかさねながら、可能性を引き出す支援、粘り強く伴走する学びの場づくりをしていきたい」とコメントしました。

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説明会の最後は、横浜コミュニティデザイン・ラボと連携し学院を運営する明蓬館高等学校校長兼SNECセンター長の日野公三さんが
「スペシャルニーズを持つ生徒から学ぶ教育へ」というテーマで講演しました。

今後、「発達障害だから創造力がないわけではない。むしろ、発達障害のこどもたちこそ、社会を変えていく可能性がある」と日野さんは話します。その1つの例として、自閉症を抱えながらも自らの才能を発揮し活躍する作家で卒業生でもある東田直樹さんの事例を紹介しました。

ただ、可能性があるという一方で、発達障害の子どもは周囲の不理解によって、自己肯定感が低くなり不登校や引きこもりなど「二次障害」に陥りやすいリスクもあります。

日野さんは、特別支援教育の体制がない高校に進学することができても、その後集団生活にうまくなじめず、教師の指導も不十分なまま生活離脱を余儀なくされた生徒の事例を紹介。「社会へ接続するための高校の3年間は、その後の人生にとってとても重要。ここで、さまざまなつながりをつくっておくことが、その後の就労や生活のありようを決める」と話しました。さらに2次障害などの進行を食い止めるには「初動段階で関わる大人をいかに増やすかが重要」と地域で学ぶことの大切さを繰り返しました。

横浜コミュニティデザイン・ラボでは、この事業について10月中にLOCAL GOOD YOKOHAMAでクラウドファンディングを実施する予定です。また、横浜ラーニングデザイン高等学院の説明会を、10月25日(日曜日)13時〜15時に行います。

※1 ソーシャルインクリュージョン
「社会的包摂」と訳される。1980年代から欧州で広がってきた考え方で、社会的・経済的にさまざまな機会から疎外され、孤立している人達を、社会的な構成員として包み込んでいこうという意味がある。対概念は「ソーシャルエクス区リュージョン」(社会的排除)。